YK011 Mouse
C-Peptide I EIAキット
T.
はじめに
C-ペプチドは、インスリン生合成前駆体であるプロインスリンの膵B細胞内でのプロセッシングによって生じる副産物です。インスリンと等モル比で血中に放出されるので、血中C-ペプチド濃度を測定することによって、膵B細胞のインスリンの分泌機能を推測することができます。C-ペプチドの半減期はインスリンのそれよりかなり長いという特徴を持っていることから、代謝が速いインスリンの代わりにC-ペプチドを測定することはインスリン分泌量をより正確に知るための指標となるところから、臨床上広く利用されています。C-ペプチドの測定は臨床的にはインスリン治療中の糖尿病患者のB細胞機能の評価(インスリン測定の代用)のみならず、低血糖状態の鑑別診断、高インスリン血症の鑑別診断、インスリン分泌総量の推定、膵摘出後の残存膵の有無の判定などにも応用されています。その他、インスリン受容体異常症や異常インスリン血症等インスリン代謝が大きく影響される病態では、C-ペプチドの測定はインスリンの測定よりはるかに重要となります。
また、長らく生理的活性がなく、ただインスリンの生合成副産物と考えられていたC-ペプチドについて近年の研究では、細胞の表面と特異的に結合し、Ca2+の細胞内への流入を促進し、MAP kinase、Na+、K+-ATPaseやeNOSを活性化するなどの結果が報告されています。動物実験ではさらに糖尿病合併症の予防、心臓の虚血・再灌流傷害の保護効果、1型糖尿病ラットにおける神経再生能力低下の防止、およびインスリン仲介細胞の成長促進や高濃度グルコースによる細胞アポトーシスの保護などが観測されています。これらの成果から、今後C-ペプチドの生理活性研究はかつてないほど注目されてくるものと予測されます。
当研究所ではすでにラットC-ペプチドの測定キットを開発しています。マウスもラットと同様、2種類のC-ペプチドが存在します。今回開発したマウスC-ペプチドの簡易測定キットは、マウスC-ペプチドIIとは反応しないIのみを認識する抗体を用い、ビオチン化マウスC-ペプチドIを標識抗原とすることにより、マウスの血清、血漿および尿中のC-ペプチドI濃度を特異的に測定することを可能にしました。本EIAキットはマウス体内のC-ペプチドIの変動を検討する上で、極めて有効に使用できます。
さらに当研究所ではマウスC-ペプチドII簡易測定キットならびにマウスC-ペプチド(総C-ペプチド量)簡易測定キットを現在開発中です。
YK011 Mouse C-Peptide I EIAキット 終了します。 ▼ プレートは一列(8ウエル)ずつ取り外しがで きますので、キットの分割使用が可能です。 2〜8℃で保存してください。製造日より 24ヶ月間は安定です。 |
内容 1)測定プレート 2)標準品 3)標識抗原 4)特異抗体 5)緩衝液 6)SA-HRP溶液 7)基質溶解液 8)OPD錠 9)酵素反応停止液 10)濃縮洗浄液 11)プレート密閉用シール |
本製品は予告せずに仕様が変更される場合があります。
U.
特徴
本キットはマウスの血清・血漿および尿に含まれるマウスC-ペプチドIを直接的且つ特異的に定量するためのキットです。操作は簡便でしかも特異性・定量性に優れ、共存する他の生理活性物質や体液成分の影響を受けにくいなど多くの利点があります。なお、添付の標準マウスC-ペプチドIは高純度合成品(純度98%以上)であり、表示の重量は絶対量を示しております。
また、ビオチン化マウスC-ペプチドIは、HPLCにより精製したNα-biotinylglycylglycyl mouse C-peptide Iを使用しています。
<特異性>
本キットはマウスC-ペプチドIIと6.3%、マウスインスリンと6.5%、ラットC-ペプチドIと156.4%、ラットC-ペプチドIIと114.6%、ラットインスリンと7.4%の交差反応性が認められます。ヒトとイヌのC-ペプチドとの交差反応性は認められません。本キットでもラットC-ペプチドを測定することはできますが、標準品が異なりますので、ラットのサンプルを測定する場合、弊社のラットC-ペプチド測定キットYK010をご利用ください。
<測定原理>
本キットは特異性の高いC-ペプチドIポリクロナール抗体を用いた競合法に、ビオチンとストレプトアビジンの非常に高い親和性を利用した測定法です。測定プレートの各ウエルには、ヤギ抗ウサギIgG抗体が固定化されています。この各ウエルに標準マウスC-ペプチドIまたは検体、ビオチン化マウスC-ペプチドIおよびウサギ抗マウスC-ペプチドIポリクローナル抗体を順次加えて競合反応させます。これにHRP(horse-radish
peroxidase)結合ストレプトアビジンを加え、ウエル上にHRP結合ストレプトアビジン-ビオチン化抗原-抗体複合体を形成させます。最後にこの複合体中のHRP活性を測定することにより、検体中のマウス免疫活性C-ペプチドI濃度を求めることができます。
V.
基本性能
<測定範囲> 有効測定範囲 0.617ng/mL〜50ng/mL
0.617ng/mLを下回るような低値の検体が予想される場合、検出限度としてさらに0.617ng/mLの標準液を3倍希釈し0.206ng/mLの標準液を設けることができます。この場合、0.206ng/mL〜0.617ng/mLの範囲の測定値の精度は上記有効測定範囲ほど高くはありませんので、概算値として使用してください。
<標準曲線例>
![]() |
<再現性>
同時再現性 CV(%) |
血清 |
3.1〜4.9 |
|
血漿 |
5.6〜7.5 |
|
尿 |
3.4〜4.6 |
日差再現性 CV(%) |
血清 |
4.7〜8.8 |
|
血漿 |
4.8〜8.1 |
|
尿 |
5.3〜11.3 |
|
Added |
Observed |
Expected |
Recovery (%) |
Mouse serum No.1 |
0.00 |
1.97 |
|
|
|
1.85 |
3.82 |
3.82 |
100.0 |
5.56 |
8.60 |
7.53 |
114.2 |
|
16.67 |
23.03 |
18.64 |
123.6 |
|
Mouse serum No.2 |
0.00 |
1.89 |
|
|
|
1.85 |
3.73 |
3.74 |
99.7 |
|
5.56 |
7.94 |
7.44 |
106.7 |
|
16.67 |
22.22 |
18.55 |
119.8 |
Mouse serum No.3 |
0.00 |
2.32 |
|
|
|
1.85 |
4.06 |
4.17 |
97.3 |
|
5.56 |
8.40 |
7.87 |
106.7 |
|
16.67 |
22.38 |
18.98 |
117.9 |
Mouse EDTA plasma No. 4 |
0.00 |
1.82 |
|
|
|
1.85 |
3.64 |
3.67 |
99.2 |
|
5.56 |
7.55 |
7.37 |
102.4 |
|
16.67 |
22.95 |
18.49 |
124.1 |
Mouse EDTA plasma No. 5 |
0.00 |
1.75 |
|
|
|
1.85 |
3.42 |
3.60 |
95.0 |
|
5.56 |
7.87 |
7.31 |
107.7 |
|
16.67 |
22.30 |
18.42 |
121.1 |
Mouse EDTA plasma No. 6 |
0.00 |
1.34 |
|
|
|
1.85 |
3.15 |
3.19 |
98.6 |
|
5.56 |
7.17 |
6.89 |
104.0 |
|
16.67 |
19.73 |
18.01 |
109.6 |
Mouse EDTA plasma No. 7 |
0.00 |
1.71 |
|
|
|
1.85 |
3.60 |
3.57 |
100.9 |
|
5.56 |
7.53 |
7.27 |
103.5 |
|
16.67 |
18.45 |
18.38 |
100.4 |
Mouse urine No.8 |
0.00 |
0.66 |
|
|
|
1.85 |
2.47 |
2.51 |
98.4 |
|
5.56 |
6.57 |
6.21 |
105.8 |
|
16.67 |
19.17 |
17.32 |
110.7 |
Mouse urine No.9 |
0.00 |
1.25 |
|
|
|
1.85 |
2.91 |
3.10 |
93.7 |
|
5.56 |
6.83 |
6.80 |
100.4 |
|
16.67 |
20.09 |
17.92 |
112.14 |
Mouse urine No.10 |
0.00 |
2.23 |
|
|
|
1.85 |
3.59 |
4.08 |
88.0 |
|
5.56 |
7.61 |
7.79 |
97.7 |
|
16.67 |
22.34 |
18.90 |
118.2 |
注:尿サンプルは24時間で収集したマウスの尿を緩衝液で30倍に希釈してから添加回収試験に使用した。
Y.
貯蔵法および有効期間
<貯法>
遮光し、2〜8℃にて保存してください。
<有効期間>
製造日より24ヶ月間(使用期限は外箱に表示)
<包装>
1キット96テスト分(標準曲線作成用を含む)
X. 文献
1. Wahren, J. et al: C-peptide makes a comeback, Diabetes
Metab. Res. Rev., 19 (5), 345-347, 2003
2. Pierson, CR. et al: Proinsulin C-peptide replacement in type
1 diabetic BB/Wor-rats prevents deficits in nerve fiber regeneration. J.
Neuropathol. Exp. Neurol., 62 (7), 765-79, 2003
3. Li, ZG. et al: C-peptide enhances insulin-mediated cell
growth and protection against high glucose-induced apoptosis in SH-SY5Y cells,
Diabetes Metab. Res. Rev., 19 (5), 375-85, 2003
4. Johansson, J. et al: Molecular efffects of proinsulin
C-peptide, Biochem. Biophy. Res. Comm., 295, 1035-1040, 2002
5. Lindon, H. et al: C-peptide exerts cardioprotective effects
in myocardical ischemia-reperfusion, Am. J. Phsiol. Heart Circ. Physiol., 279
(4), 1453-1459, 2000
6. 松田万幸、岡 芳知:C-ペプチド(CPR),日本臨床57巻, 1999年増刊号,広範囲血液・尿化学検査、免疫学的検査(4), 313-316, 1999
7. Wentworth, BM. et al: Characterization of the two nonallelic
genes encoding mouse preproinsulin, J. Mol. Evol., 23 (4), 305-312, 1986
8. Yanaihara, C. et al: Immunoreactive rat C-peptide I and II
in glucose perfusate of isolated pancreas. In: Insulin (ed. Brandenburg, D.,
and Wollmer. A.), Walter de Gruyter & Co., Berlin, 651-657, 1980
9. Yanaihara, C. et al: Immunological studies on synthetic rat
and guinea pig C-peptide. In: Proinsulin, Insulin, C-peptide (ed. Baba,S.,
Kaneko,S., and Yanaihara, N.), Excerpta Medica, Amsterdam-Oxford, 87-93, 1979
<お問い合わせ先>
株式会社 矢内原研究所
〒418-0011 静岡県富士宮市粟倉2480-1
FAX: 0544-22-2770 TEL: 0544-22-2771
www.yanaihara.co.jp ask@yanaihara.co.jp
2004年11月24日改訂